酒さ(赤ら顔)Rosacea

酒さRosacea

酒さとは

鼻〜頬を中心に、赤み・ほてり、易刺激性(※)、ニキビのような発疹を伴う皮膚疾患です。中高年になってから発症することも多く、やや女性に多い傾向があります。ニキビのようなブツブツが出ることがありますが、ニキビ(尋常性痤瘡)とは異なる疾患です。
酒さの明らかな原因は分かっておらず完全に治す治療法も確立されていませんが、後に述べる悪化要因を避けながら、複数の治療法を組み合わせることで症状の改善が期待できます。
※いろいろな化粧品が使えない、温まったりマスクなど些細な刺激でチリチリ・ピリピリといった刺激を感じやすい、など過敏になる状態。

酒さの悪化要因

アルコール・カフェイン・香辛料などの刺激物、寒暖差、摩擦などの物理的刺激、紫外線など

酒さの症状

下記のような症状の型の分類があります。
必ず①から②へと順に進行していくわけではなく、それぞれの症状が同時に起こることや移行することが多々あります。

  1. 紅斑毛細血管拡張型
    頬や鼻(瞼を避けることが多い)などの持続的な赤み、ほてり感、モヤモヤとした血管拡張、易刺激性。
  2. 丘疹膿疱型
    ニキビのようなブツブツ。ニキビ(尋常性痤瘡)に似ているが、コメド(面ぽう)を伴わない。
  3. 瘤腫型(鼻瘤)
    大きいブツブツが線維化(硬く固定)して鼻がボコボコと瘤のようになる。男性に多い傾向。
  4. 眼型
    目の周りの赤み、ぶつぶつ、結膜の赤みなど。

酒さの原因

解明されていない部分も多い疾患ですが、遺伝的要素、皮膚の常在菌のバランスの乱れ、血管及び神経の反応亢進、毛包虫という寄生虫の増殖、などが関連しているとされます。
いずれにしろ一つの要因を除去すると完治するという病態ではなく、先に述べた悪化要因を避けつつ上手にコントロールする必要があります。

酒さの治療

治療法は確立されておらず、症状やその方の生活習慣や可能な通院頻度などに合わせて、治療法を検討します。
一つの治療では効果が不十分な場合も多く、通常は複数の治療を組み合わせて治療を行います。
またスキンケアや日常生活での留意点に気をつけることも酒さにおいては非常に大切です。

保険診療

内服薬(飲み薬)
抗生物質
ある種の抗生物質は、単なる抗菌作用ではなく抗炎症作用による効果があり酒さに有効です。本来抗生物質は長期間にわたり飲むことは少ないですが、この場合は、1〜数ヶ月と通常の細菌感染症より長めに飲むことも多いです。
漢方薬
一部の漢方薬は酒さの赤みやぶつぶつ、ほてりに有効とされます。漢方薬を併用することで、抗生物質の投与期間が短縮できたり、症状が赤みとほてりのみ(有効な保険診療の治療が無い)といった場合に漢方薬が有効な例があるので、当院では積極的に提案しています。

外用剤(塗り薬)
メトロニダゾール外用剤(ロゼックス®ゲル)
多くの国で酒さの標準治療薬です。2022年5月より日本でも酒さに対する保険診療での処方が可能となりました。
主に酒さのブツブツに対して使用します。3ヶ月程度を目安に継続します。デメリットとしては基剤がジェルで刺激感・乾燥を感じる方も多いため、当院では初診時の刺激を感じやすい状態では他の治療を優先的に行い、症状が少しが落ち着いてから処方を行うなど状態によって処方しています。
抗生物質、抗真菌薬
痤瘡や脂漏性皮膚炎の合併がある場合には、併用します。

自費(保険外)診療

酒さは確立された治療が少ない疾患であり、また海外で行われている治療でも国内では保険適応となっていないものもあります。また赤みそのものに対する保険適用内の有効な治療はありません。
当院では基本的には保険診療を優先して治療を行っていますが、治療で改善がない場合、また症状は改善したものの残った症状をさらに改善させたいという場合は、希望に応じて保険外の診療を提案しています。
酒さという同じ病態の中でも、表皮の炎症やバリア機能低下を伴うケース、皮脂腺の発達が強いケース、などその方の症状により優先的に提案する治療は異なります。また金額や痛みやダウンタイムといった要素も含め、お一人お一人と相談して治療方針を決定していきます。

光治療(IPL、フォトセラピー)

酒さの特徴の一つである血管拡張による皮膚の赤みに対する治療は外用剤だけでは難しいことが多く、赤みに対してより高い効果を希望する場合には光治療や一部のレーザーが用いられます。
当院ではセレックVという機器を使用しています。 赤みへの治療効果の高い2種類の波長を持つ専用のフィルターを用いて顔全体および気になる部位には重ねて照射を行います。 続けることで赤みだけでなく毛穴の開きなどの改善も期待できます。

セレックVの詳細はこちら


ポテンツァS 【赤ら顔】

ポテンツァは先端のチップを変えることで様々な目的の治療が可能な高周波治療機器です。赤ら顔に対しては主にSチップによる治療を行い、針先端から出る高周波で肌内部に熱を加えることで、赤みや肌質改善を目指します。皮脂腺の縮小によりニキビ様のぶつぶつができにくい効果も期待できます。
治療範囲は、顔全体に加えて、鼻・頬などの部位のみのプランもあります。

ポテンツァの詳細はこちら


ボライト注射

ボライトは皮膚の水分量を高める作用のあるヒアルロン酸含有の注射です。ヒアルロン酸と言ってもカタチを整える目的ではなく、肌質改善目的の注射です。ボライトの持つ皮膚が自ら潤う保水力を高める作用により、バリア機能の改善が期待できます。
酒さなど赤みが出やすい皮膚では、紫外線・乾燥・寒暖差など外からの刺激で炎症が増悪します。ボライト注射の作用によりバリア機能が改善することで、外からの刺激に負けにくい・赤みが出にくい肌に導きます。
ボライト注射は、皮膚に直接注射するのでややハードルが高い治療ですが、一回の治療で効果が9ヶ月程度持続する点は非常に大きなメリットと言えます。

ボライト注射の詳細はこちら


イベルメクチンクリーム

イベルメクチンはダニや寄生虫などに対する駆虫剤です。酒さの肌ではニキビダニが増えていることがあります。ニキビダニは誰の皮膚にでも存在するものですが、肌質やケアなど様々な要因によって増えて皮膚の炎症を増悪させることがあります。特にステロイドやタクロリムス外用剤を長期間使用した後に、ニキビダニは増えることが多いです。
イベルメクチンクリームがニキビダニを減らすことで、ブツブツ、ひりつき、刺激感や痒みなど肌の炎症を改善します。※妊娠中は使えません。

イベルメクチンクリーム 4,400円(税込、別途診察料あり)

アゼライン酸配合製品
アゼライン酸は、海外では酒さやニキビの医療用医薬品として使われることも多い成分です。日本では医薬品としての承認ではなく、化粧品含有成分となっています。処方ではなく購入する製品ですが、他の保険外治療と比べて非常に安価であり、まず試してみてもよい製剤です。
アゼライン酸は妊娠中でも使用可能であり、抗生剤のように耐性菌の懸念も少ない、長期使用においても安全性の高い成分です。
当院では、朝晩塗布するアゼライン酸20%配合クリームと、酒さの赤みをカバーしつつ赤みの目立たない皮膚に導く10%配合赤みカバー製品の2つを取り扱っています。使用感や状況によって使い分けや併用もお勧めです。

アゼライン酸には下記のような作用があります。
 ・角化異常の抑制
 ・抗菌活性
 ・皮脂分泌の抑制
 ・抗炎症作用
 ・メラニン産生を抑制(美白)

AZAクリア(ロート製薬) 15g 1,980円(税込)
スキンケアエマルジョンAZ(グラファ) 12g 3,850円(税込)

スキンケア・生活での留意点

酒さではスキンケアやメイク、食事や運動などの生活習慣も重要な役割を占めます。敏感肌の要素も持つため、洗顔やスキンケアの際の摩擦は避けましょう。脂っぽく感じたりニキビのようなブツブツができるため脱脂力の強い洗浄料を好む方もいますが、洗顔で肌の保湿成分を取りすぎることは避けましょう。また温熱刺激で赤みやほてり痒みが悪化しますので、熱いお湯は避けてぬるま湯で洗うようにしましょう。
紫外線は悪化要因なので遮光が必要です。製品によっては(特にサラサラ感が強い製品には注意)刺激を感じやすい人もいるので、毎日使う日焼け止めは低刺激のものがおすすめです。高温の場所も悪化要因ですので、サウナやホットヨガなどは避けた方が良いと言えます。
最初にも述べたように、酒さには「悪化要因」があります。悪化要因の全てを避けることは不可能ですが、「○○の後に真っ赤になる、ほてりが悪くなる」など自分自身で感じている要因はできるだけ除去すると良いです。ただ外気温による温度差など避けようのないものに対して必要以上に悪化を気にし過ぎたり、特定の食品を過剰に避けるようなことは長期間ではそのこと自体がストレス要因となります。慢性疾患においては、改善したり悪化したりという症状の波に一喜一憂するのではなく、無理なく悪化要因を避けて上手にコントロールしようというイメージで捉えていただくのが良いと思います。日常生活で不安なこと、悪化した気がするけどどうだろう?と思うことがあれば診察時にお尋ねください。

ご予約についてReserve

保険診療も予約優先当日30分前まで予約可

当院は「密にならない対策」として予約優先制としております。時間帯でのご予約をしていただく事で、院内での待ち時間の削減に努めています。
ご理解・ご協力のほどよろしくお願い致します。

診療予約
PAGE TOP